2010年の秋以来、3年半ぶりに本の仕事が完成しました。
授業でそのまま使えるPowerPoint付き! 高校生物解説書 植物編
監修: 町田泰則
監修: 岡田清孝
監修: 山本興太朗
発行年月日:2014/04/10
サイズ:B5判 ページ数:107
価格:本体 3,600円(税別)
2007年から2008年に出版した「植物まるかじり叢書」(化学同人)で監修を務められた先生からご推薦いただいて、サイエンスライターとして執筆・編集協力することになりました。
平成25年度から使われている【高校生物】の教科書のうち、植物・環境分野について、植物の専門家が解説するという本です。この教科書は、大学の教養課程でも十分使えそうな難易度で、高校の生物の先生にとっても、おそらくご自身の専門分野以外のところを教えられるのは難しいのではないかと思います。
私自身、数年前から【高校生物】の教科書・教師用指導書・問題集の編集に関わってきて、今回は書店売りされる解説書の制作に関わることができたことで、この科目をより深く知ることができました。
改めて、生物という教科のおもしろさを感じています。
最近の仕事
第5回ニセコ冬の音楽祭
新たな実行委員会、新たな演奏家、新たな会場で、第5回目の音楽祭を無事開催しました。事務局として奔走し、よい経験と思い出ができました。
知恵蔵(kotobank)解説佐村河内守/ジェフリー・バトル/ブライアン・オーサ-/
ムーミン/
STAP細胞 その他
カナダスノーネット10シーズン目のニュース更新は、あと1か月で終了です。
出版ネッツ機関誌「forum」3月号
はじめてデスクを務めました。巻頭特集「ゴーストライターを考える」には、非常に面白い原稿が集まり、好評でした。もうしばらくすると、一部の内容がウェブ上にアップされます。私自身は、ある音楽家の方にインタビューをして原稿を作成しました。紙面の関係で短くまとめましたので、以下に原文を掲載します。
クラシック音楽の専門家に訊く
作曲における作者とは
佐村河内氏の事件で、音楽の世界にもゴーストライターがあるのかと驚いた人は多くいるのではないでしょうか。実は私もその1人。音楽における作者というものについての素朴な疑問が沸き起こり、クラシック音楽の専門家で渦中の新垣隆氏にも近しいMさん(匿名希望)にお話をうかがいました。(まとめ:葛西奈津子 / 執筆)
クラシック音楽における作曲者・編曲者
クラシック音楽について一般的に言えることは、「共作」といってあえて複数の作曲家が共同で作曲をする場合を除き、通常は1人の作曲家が主旋律はもちろんすべてのパートの譜面を書くものだということです。分業はありません。クラシック音楽における「編曲者」とは、たとえばオリジナルがピアノとギターのための曲を室内楽用にアレンジするといった場合に、編曲者として名のります。
いずれにしても、(代筆の意味での)ゴーストライターという役割は、基本的にありません。ただし、クラシック音楽においては次のようなケースがあります。
1.「偽作」:公表された作曲者とは別の人物による作曲と認められているもの。たとえば偉大な作曲家の晩年に、曲を完成させる体力・生命が残っていない場合、その家族や友人、弟子などが曲を完成させる場合がある。
2.あえて他の人の名前を使って自分の曲を発表するもの。たとえば、クライスラーは、自分の作品の作曲者名を、当初は「古い教会の引き出しから出てきた」などと言って昔の作曲家の作品と偽って紹介していたが、これは当時の音楽評論の風潮に対して、作曲者名にとらわれず正当に曲を評価してほしかったからなどの理由があるとされる。
技法・理論・指示書があれば交響曲も書ける
クラシック音楽というものは、作曲技法や理論の上にたって作曲されるものですから、作曲をきちんと学んだ人であれば、決まりごとにしたがって「交響曲」を書くことは物理的には可能です。新垣さんがなぜゴーストライターを続けてきたかはわかりませんが、ピアノの演奏に優れ、音大で作曲を教える彼にとって、何らかの「指示書」があればそれに沿った曲を作ることは難しくなかったでしょう。
新垣さん自身の専門分野は現代音楽です。これは必ずしも万人に受ける音楽、ヒット曲を目指す音楽ではありません。西洋音楽の作曲法が課す音の使い方の限界を打ち破り、新たな芸術音楽を目指すもので、世紀末に、絵画、彫刻、文学、建築などあらゆる芸術の分野で前衛主義(アバンギャルド)が生まれたのと同じ流れにあります。新垣さんが音楽の世界で追い求めているものは、交響曲でベストセラーとなることではないはずで、そのためにゴーストライターを務めていたのではなかっただろうと思います。
評価を受ける作品、愛され続ける作品とは
偽作であっても、作者名を偽って公表した曲であっても、すばらしい作品は後世にわたって残り愛されます。しかし、現代はエピソードやタイトル、キャッチコピーが、評価や売れ行きに大きな影響を与える時代です。これは音楽だけでなく、広く人間の活動に言えることです。そして、昨日まですばらしいと言われていたものが、明日には手のひらを返したように評価が変わってしまうこともあります。私は今回の事件を機に、自分もまたそんな世界に生きているという恐怖を覚えました。自分が正しいと信じて進む道でも、このような世界で一度評価が変わってしまえば、取り戻すのには長い時間がかかってしまいます。音楽家の仕事について少しでもお伝えしたく、以上お話ししました。
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出版の世界では、書く手段・機会を持たない人のための代筆から「でっちあげ」まで、さまざまなゴーストライティングが混在しています。今回の特集で、ゴーストライターについて整理するには至りませんが、音楽界の事件を機に今後議論が深まることを望みます。